第339号 編集後記

樹木希林さんの訃報が伝わってから、落ち着かない日々が続いた。普段なら気にも留めない些細なことに執着してみたり、ふと、縁のあった数多の人たちのことを思い起こしたり、どうも心が安定しない。樹木さんとの出会いは、5年前、「森繁久彌生誕100年記念事業」取材での数分だった。囲みインタビューを受ける樹木さんに他のマスコミ記者は、がん治療のこと、内田裕也氏の事しか聞かない。抵抗があった。故人を偲び、来阪した樹木さんに森繁氏との想い出を聞いた、つかの間のやり取り。あの声が、今でも耳に残っている。自然体で生きていたいと、痛烈に思う。

(安)