第340号 編集後記

今年ほど、秋の到来を待ち遠しく思ったことはない。真夏の太陽が大好きだったのはいつ頃までだっただろう。青空を仰ぎ見て闊歩した道や風景がはるか遠くに色あせていく。インドの人生論の四住期でいえば、今の自分は林住期。「仕事や家庭から卒業し林に庵を構えて、自らの来し方行く末を深く瞑想する時期」なのだそうだ。そういえば、仕事と趣味の両輪で時間と格闘して「走り続けて前ついてデン」が口癖だった。ある時、思いがけず体が不調を訴えだし、片方の輪がうまく動かなくなった。と、並行するように今までの生き方や考え方に変化が出てきた。ゆっくりと時を貯めながら、生命の根源の声を聞いていきたいと思う。

(安)