小学校時代の友人から、電話があった。大阪船場のど真ん中に母校はある。
本屋、文房具店、銭湯、商人の家屋など、幼いころの原風景はのんびりとした風情のまま心にあるが、今は数十年前の面影はなく小学校のみ現存する。
子ども心に急坂だと感じていた小学校前の坂道は、ビルの狭間に窮屈そうに残る。船場、いとはんの育ちの良いしっかり者の人柄は、密かな誇りでもあり、会っていなくても、心根の優しさが伝わってくる。
自分の身体の不調を秘めて、当方を気遣う言葉が電話から伝わってきた。言葉は魔法だ。信頼していた人の言葉に傷ついた時期に、言葉の良薬で癒やされた。盛夏の一服の清涼剤だった。
(安)