第352号 編集後記

 「人間を助けることが何より大事」。故元国連難民高等弁務官・緒方貞子さんの言葉は明快だ。防弾チョッキにヘルメットでの現地入りの姿からは、紛争を繰り返す場所にいる悲壮感は伺えない。なぜ?その柔和な笑顔だ。ルワンダ難民のこどもたちが差し出す手を握り返す。その肌感がこちらに率直に伝わる。一方、形式的に原発事故被災地をスーツ姿で訪れたり、台風水害の現状を考察することもなく、「何事もなく治まった」と言い切る想像力のない人がいる。亡き緒方さんには、今の日本の政治家はどう映るのだろう。曽祖父の犬養元首相の理不尽な死。五・一五事件は彼女が戦争を回避する肝のような気がする。
(安)