国内で新型コロナウイルス感染者が出たことで、立春の時期を迎える喜びは吹っ飛んだ。
ふと、阪神淡路大震災直後と、東日本大震災1ヶ月後に現地を訪れて味わった感覚が蘇った。眼前で見たのは、正常に機能していた直前までの営みが遮断された風化したまち。だが、不自由な避難場所にいながら、被災者の生きるための息遣いが間違いなく伝わってきた。一人ひとりの命の尊さに手を合わせた。「人は裸で生まれ、裸で終焉を迎える」ことを胸に刻み、生の奇跡を自分だけでなく他者と共有しなければと思う。
人の命は重く、数値化されない。世界に蔓延する脅威は、安穏とした現代人への警鐘なのかもしれない。
(安)