第375号 編集後記

「人間の成長はどこかで人間性の衰退のように思う」。85歳の芸術家は地震の絵を前に述懐する。「5歳の時を頂点に純粋、無心、無邪気、素朴はその後の僕の絵からはすっかり消えてしまっている」。60年にわたる作品群。横尾忠則東京店を一巡した彼の言葉だ。
死の恐れを知らない無垢な魂はいつしか風化する。100年時代と喧伝され、人生レースの距離は延びている。メメントモリ(死を忘れるな)を銘に、さて、これからどう生き延びようか?原点回帰を胸に秘めて、自分の進化を問うてみる。

(安)